注文住宅の施主支給のリアル|コスト・責任・トラブルの実情を整理
- 見積もりバンク担当者

- 2025年12月19日
- 読了時間: 21分
更新日:2025年12月19日
注文住宅でよく聞く「施主支給」。自分で設備や照明を用意すれば安くなる、と思っていませんか?
実際には、施工費の追加や保証対象外、工期への影響など、施主支給ならではのリスクも多く存在します。知らずに進めると、「思ったより安くならなかった」「後悔した」というケースも少なくありません。
この記事では、注文住宅における施主支給の仕組みや実情を整理し、本当に施主支給を選ぶべきケース・避けた方がいいケースを実務目線で解説します。安さだけで判断せず、納得できる選択をするための判断材料としてお役立てください。

目次
1-1. 施主支給の基本的な考え方
1-2. 標準仕様・オプションとの違い
1-3. 施主支給が注目される理由
2-1. 商品代が安くなるケース
2-2. 施工費・管理費が別途かかる場合
2-3. トータルで高くなるパターン
4-1. 納期遅延・現場トラブル
4-2. サイズ・仕様違いによる施工不可
4-3. 不具合時の責任の所在
5-1. 保証対象外になるケース
5-2. 施工後の不具合対応は誰がするのか
5-3. 契約書・約款で見るべきポイント
6-1. 金額差が明確かどうか
6-2. 工期・施工リスクを許容できるか
6-3. 住宅会社との事前合意が取れているか

「施主支給(せしゅしきゅう)」という言葉を聞くと、「自分で安く買って持ち込めば、家づくりの費用を抑えられる方法」そんなイメージを持つ方が多いかもしれません。
ですが、注文住宅の現場で数多くの見積もりや契約を見てきた立場から言うと、**施主支給は“節約テクニック”というより、“責任の範囲を自分で引き受ける選択”**に近い存在です。
この章ではまず、
施主支給とは何か
標準仕様・オプションとの違い
なぜ近年、注文住宅で施主支給が注目されているのか
を、初心者の方にも分かるように、かつ実務的な視点も交えながら整理していきます。
1-1. 施主支給の基本的な考え方
■ 施主支給とは何か(要約)
施主支給とは、住宅会社を通さず、施主(家を建てる人)が自分で商品を購入し、現場に支給することを指します。
■ もう少し具体的に
注文住宅では通常、
照明器具
キッチンや洗面の水栓
トイレ・洗面台
タオル掛け・ペーパーホルダー
といった設備や部材は、住宅会社が選定・仕入れ・施工まで一括管理します。
一方、施主支給では、
施主自身が商品を選ぶ
ネットショップやメーカー直販で購入する
指定された期日までに現場へ納品する
住宅会社が「施工のみ」を行う
という流れになります。
ここで重要なのは、「商品選定・発注・納期管理・初期不良確認」は原則すべて施主側の責任になるという点です。
■ 現場目線でよくある誤解
実際の相談でよくあるのが、次のような勘違いです。
「商品は自分で買うけど、あとは住宅会社が何とかしてくれると思っていました」
しかし現場では、
納期が1日でも遅れる
梱包の中身が違う
部品が1つ足りない
こうした小さなズレが、工期全体に影響することも珍しくありません。
施主支給=自由度が高い同時に施主支給=管理責任が増える
この両面を理解することが、注文住宅で施主支給を考える第一歩です。
▼ プロ視点の補足(実体験)
現場監督からすると、施主支給品は「施工はするが、責任を持てないグレーゾーン」になりやすい存在です。悪意があるわけではなく、管理できないものに保証を付けられないという、非常に現実的な理由からです。
1-2. 標準仕様・オプションとの違い
施主支給を正しく理解するためには、「標準仕様」「オプション」「施主支給」の違いを整理する必要があります。
■ 3つの違いを一目で整理
区分 | 商品選定 | 発注・管理 | 施工 | 不具合時の責任 |
標準仕様 | 住宅会社 | 住宅会社 | 住宅会社 | 住宅会社 |
オプション | 住宅会社(選択制) | 住宅会社 | 住宅会社 | 住宅会社 |
施主支給 | 施主 | 施主 | 住宅会社 | 原則施主 |
※契約内容によって例外はありますが、基本構造はこの考え方です。
■ 見積書での表記の違い
注文住宅の見積書では、
標準仕様:本体工事費に含まれる
オプション:追加工事として明示される
施主支給:「別途施主支給」「支給品」などの注記のみ
となることが多く、金額が見えにくくなる傾向があります。
ここが後々、
「あれ?思ったより総額が下がっていない…」
と感じる原因にもなります。
■ プロが警戒するポイント
標準仕様やオプションは、
施工実績がある
納まり(サイズ・取り合い)が確立されている
万一の不具合時も責任分界が明確
というメリットがあります。
施主支給はこの“安全装置”を外す行為でもあるため、価格だけで比較するのは非常に危険です。
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1-3. 施主支給が注目される理由
ではなぜ、これほどリスクのある施主支給が、注文住宅の世界で注目されているのでしょうか。
■ 背景①:情報と購入手段の変化
近年は、
Amazon・楽天市場
メーカー直販EC
海外製品の個人輸入
などにより、施主自身がプロ並みの選択肢にアクセスできる時代になりました。
「住宅会社経由だと高いのでは?」という疑問を持つ人が増えたのは自然な流れです。
■ 背景②:SNS・ブログによる成功体験の拡散
SNSでは、
「照明を施主支給にしたら10万円安くなった!」「ネットで買った水栓でおしゃれになった!」
といった成功事例だけが拡散されがちです。
一方で、
納期トラブル
サイズ違い
保証対象外
といった失敗談は、表に出にくいのが現実です。
■ 背景③:住宅価格の高騰
2023年以降、建材価格・人件費の上昇により、注文住宅の総額は全国的に上昇傾向です。
その中で、
「どこか削れるところはないか」
と考えたとき、“自分でできそう”に見える施主支給が選択肢に上がりやすいのです。
▼ 専門家コメント(要点整理)
施主支給は「コスト削減策」として語られやすい
しかし本質は「責任とリスクの移動」
判断基準を間違えると、安くなるどころか高くつく
◆ 第1章まとめ(要点チェック)
施主支給とは、商品管理の責任を施主が持つ仕組み
標準仕様・オプションとは責任範囲が根本的に違う
注目される背景には、価格高騰と情報過多がある
成功事例だけで判断するのは危険

「施主支給=安くなる」この認識は、注文住宅を検討している方の間でほぼ常識のように語られています。
ですが、実際の見積もりや契約後の総額を見ていくと、“確かに下がるケース”と“思ったほど下がらない、むしろ高くなるケース”がはっきり分かれます。
この章では、
どんな場合にコストが下がるのか
どこで追加費用が発生しやすいのか
トータルで損をしやすいパターン
を、実務の視点から整理します。
2-1. 商品代が安くなるケース
■ 要点まとめ
施主支給でコストが下がるのは、「商品価格の差」が明確に出る場合のみです。
■ 実際に差が出やすい代表例
項目 | 住宅会社経由 | 施主支給 | 差額の出やすさ |
照明器具 | 定価ベース | ネット最安 | ◎ |
表札 | カタログ商品 | オーダーEC | ◎ |
タオル掛け類 | オプション | Amazon等 | ○ |
ミラー | 住宅設備品 | インテリア商品 | ○ |
これらは共通して、
構造に関わらない
取り付けが単純
不具合時も生活に直結しにくい
という特徴があります。
■ なぜ価格差が出るのか
住宅会社が扱う商品価格には、
メーカー仕切り
管理コスト
保証・手配・在庫リスク
が含まれています。
一方、施主支給ではこれらを施主自身が引き受けるため、商品単価だけを見ると安くなるのです。
■ よくある成功例(実体験ベース)
照明を全て施主支給にし、住宅会社見積:42万円施主支給実費:24万円→ 差額18万円削減
ただし、この方は
納期を3か月前から逆算
予備品を1割多めに手配
現場と事前に取り付け方法を確認
という準備をしていました。
成功事例の裏には、必ず手間と管理があります。
▼ プロ視点の注意点
「安く買えた」という話の多くは商品代だけを切り取った話です。見積もり比較では、“施工費・管理費・保証”を含めた総額を見る必要があります。
2-2. 施工費・管理費が別途かかる場合
ここが、施主支給で最も誤解されやすいポイントです。
■ 要点まとめ
商品が安くなっても、施工費や管理費が増えると意味がなくなるケースは非常に多いです。
■ 追加されやすい費用の例
費用項目 | 内容 | よくある金額帯 |
施主支給施工費 | 通常施工と別扱い | 5,000〜20,000円/箇所 |
現場管理費 | 手配・調整リスク | 数万円〜 |
仮設・再施工費 | やり直し発生時 | 実費 |
住宅会社によっては、**「施主支給一式:◯万円」**とまとめて計上されることもあります。
■ なぜ追加費用が発生するのか
理由はシンプルで、
商品仕様が現場ごとに異なる
マニュアルや施工実績がない
トラブル時の対応工数が読めない
ためです。
住宅会社から見ると、**「通常より管理が難しい工事」**になるため、費用を上乗せせざるを得ません。
■ 実務でよくあるケース
商品代:▲10万円施工費追加:+6万円管理費追加:+3万円→ 実質削減:1万円
この状態で、
納期管理
初期不良対応
保証リスク
を背負っていると考えると、割に合わないと感じる方も多いはずです。
▼ 専門家コメント
施主支給=施工が安くなる、ではない
むしろ施工費は上がる前提で考える
見積書に「施主支給関連費」があるか必ず確認
2-3. トータルで高くなるパターン
■ 結論から
施主支給は、判断を誤ると「節約」ではなく「コスト増」になります。
■ 高くなりやすい典型パターン
パターン①:仕様違いによる再手配
取付寸法が合わない
電圧・口径が違う
建築基準に適合しない
→ 再購入+工期遅延
パターン②:工期遅延による間接コスト
引き渡し遅れ
仮住まい延長
二重家賃発生
パターン③:保証対象外による自己負担修理
水漏れ
不点灯
部品破損
■ 見積もりに現れない「見えないコスト」
種類 | 内容 |
時間コスト | 調査・連絡・調整 |
精神的負担 | トラブル対応 |
判断ミス | 買い直し |
これらは見積書には載りませんが、確実に施主側に蓄積されていきます。
■ プロが見て「危ない」と感じる施主支給
金額差が数万円程度
工期がタイト
初めての家づくり
住宅会社が消極的
この条件が重なると、施主支給は避けた方が無難です。
◆ 第2章まとめ(チェックリスト)
商品代は確かに安くなるケースがある
施工費・管理費で相殺されやすい
トータル判断をしないと失敗しやすい
「いくら下がるか」ではなく「何を背負うか」で考える

施主支給を検討する際、多くの方が最初につまずくのがこの疑問です。
「結局、どこまでが施主支給できるんですか?」
結論から言うと、“できる・できない”は法律ではなく、住宅会社の施工責任と管理範囲で決まるというのが実務のリアルです。
この章では、
実際に施主支給されやすいもの
トラブルになりやすいグレーゾーン
住宅会社が施主支給を嫌がる本当の理由
を、業界内部の事情も含めて整理します。
3-1. 照明・水栓・設備機器
■ 要点まとめ
施主支給が比較的受け入れられやすいのは「交換・後付けが可能なもの」です。
■ 施主支給されやすい代表例
分類 | 具体例 | 受け入れられやすさ |
照明 | ペンダントライト、ブラケット | ◎ |
水回り小物 | 水栓、シャワーヘッド | ○ |
衛生設備 | トイレ(条件付き) | △ |
換気関連 | レンジフード | △ |
■ 照明が施主支給の定番な理由
照明器具は、
建物構造に影響しない
配線規格がある程度共通
不具合時も交換が容易
という理由から、施主支給の成功率が高い分野です。
実際、多くの住宅会社でも「照明は施主支給OK(条件付き)」としているケースが目立ちます。
■ 水栓・設備機器は“条件付き”が基本
一方で水栓や設備機器は、
給排水の口径
取り付け高さ
建築基準・メーカー指定
といった技術的な制約があります。
そのため、
「品番を事前に提出してください」「メーカー保証は対象外になります」
といった条件が付くことがほとんどです。
▼ 現場の実体験(失敗例)
ネットで安く購入した海外製水栓。見た目は良かったが、・日本規格と合わない・施工説明書が英語のみ結果、取り付け不可 → 再購入 → 工期遅延という流れになりました。
▼ プロ視点のアドバイス
「安い」より「施工実績があるか」を優先
品番・仕様書は必ず事前提出
海外製・並行輸入品は要注意
3-2. 建材・仕上げ材の扱い
■ 結論から
建材・仕上げ材の施主支給は、リスクが非常に高い分野です。
■ 代表的な対象とリスク
項目 | リスク内容 |
フローリング | 反り・施工不良 |
クロス | 下地不適合 |
タイル | 割れ・施工精度 |
外装材 | 防水責任不明確 |
これらはすべて、建物の性能・耐久性に直結します。
■ なぜ嫌がられるのか
建材は、
施工方法
下地条件
気候・湿度
など、現場条件との相性が非常に重要です。
住宅会社は、
「自社で選定・検証していない材料では、施工後の品質保証ができない」
という立場を取らざるを得ません。
■ 実務上の落とし穴
「材料は施主支給、施工は住宅会社」
この分担は一見合理的ですが、不具合が起きた瞬間に責任の押し付け合いが始まるという現実があります。
▼ 専門家コメント
建材系の施主支給は原則おすすめしない
やるなら「全面自己責任」を覚悟
見積差が数万円なら割に合わない
3-3. 住宅会社が施主支給を嫌がる理由
施主側から見ると、
「自分で買うだけなのに、なぜ嫌がるの?」
と感じるかもしれません。
ですが、住宅会社側の立場に立つと、そこには明確な理由があります。
■ 理由①:品質保証ができない
住宅会社は、完成後の不具合対応まで含めて責任を負う立場です。
施主支給品は、
仕入れルート不明
保管状態不明
初期不良リスク
があるため、保証を付けられません。
■ 理由②:現場管理の負担が増える
納期確認
現場保管
破損チェック
これらを本来は住宅会社が行いますが、施主支給品は管理対象外になります。
それでも現場で問題が起きれば、対応せざるを得ないため、リスクだけが増えるのです。
■ 理由③:トラブル時に板挟みになる
不具合が起きた際、
施主:「施工が悪いのでは?」
メーカー:「施工環境の問題」
この板挟みに合うのが、住宅会社です。
■ 本音を一言で言うと
「儲からない上に、責任だけ増える」
これが、施主支給に慎重な住宅会社の本音です。
◆ 第3章まとめ(実務チェック)
施主支給できるかは住宅会社次第
照明・小物は比較的安全
建材・仕上げ材は高リスク
嫌がる理由は“わがまま”ではなく“責任構造”

施主支給は、理屈では理解していても**「実際に何が起きるのか」**が見えにくい分野です。
SNSやブログでは成功例が目立ちますが、現場レベルでは、同じようなトラブルが何度も繰り返されています。
この章では、
現場で本当に多いトラブル
なぜ起きるのか
どうすれば回避できるのか
を、実体験ベースで整理します。
4-1. 納期遅延・現場トラブル
■ 要点まとめ
施主支給トラブルの約半数は「納期」に関係しています。
■ よくある納期トラブルのパターン
パターン | 内容 |
入荷遅れ | メーカー欠品・輸入遅延 |
認識違い | 「間に合うと思っていた」 |
現場不在 | 納品日に受け取れない |
搬入不可 | サイズ・重量オーバー |
住宅工事は、1日単位、時には「半日単位」で工程が組まれています。
そのため、たった1つの施主支給品が間に合わないだけで、
工程がズレる
職人の手配が無駄になる
次工程が後ろ倒しになる
といった連鎖が起きます。
■ 実際にあったケース
洗面水栓を施主支給→ 納期が3日遅れる→ 洗面台施工ができない→ クロス工事が止まる→ 引き渡しが1週間延期
この場合、原因は施主支給品でも、影響は家全体に及びます。
▼ プロ視点のアドバイス
納期は「余裕をもって2週間前」
海外製・受注生産は避ける
現場監督と“搬入日”を共有する
4-2. サイズ・仕様違いによる施工不可
■ 要点まとめ
「取り付くと思っていた」が最も多い失敗理由です。
■ サイズ違いで起きる典型例
項目 | ありがちなミス |
照明 | 天井高さ・配線位置 |
水栓 | 取付穴径・芯々寸法 |
ミラー | 下地位置不足 |
トイレ | 排水位置違い |
カタログやECサイトでは“取り付け条件”が小さく書かれていることが多く、見落としが起きやすいのです。
■ 施工不可になった場合どうなるか
現場で取り付け中止
代替品を急遽手配
工事再調整
追加費用発生
このとき、
「じゃあ住宅会社で何とかして」
は通用しません。
選んだ責任は施主側にあるためです。
▼ 実体験(よくある後悔)
「サイズは合っていると思っていました」しかし実際は、・下地がない・配線位置が違う結果、再購入+追加工事費になりました。
▼ 専門家コメント
図面と仕様書を必ず照合
「なんとなく合いそう」はNG
不安な場合は現場監督に事前確認
4-3. 不具合時の責任の所在
■ 結論から
施主支給最大のリスクは「不具合時の責任が曖昧になること」です。
■ よくあるトラブル事例
不具合 | 起きる問題 |
水漏れ | 施工?商品? |
点灯不良 | 初期不良?配線? |
異音 | 製品不良?設置? |
このとき、
住宅会社:支給品なので保証外
メーカー:施工環境の問題
施主:どこに言えばいいか分からない
という三すくみ状態になります。
■ 契約上の扱い
多くの請負契約では、
「施主支給品については、製品保証・施工保証の対象外とする」
という一文が含まれています。
つまり、壊れた瞬間から自己責任になるケースがほとんどです。
▼ プロ視点の現実
トラブル時、一番困るのは施主です。住宅会社もメーカーも“責任を負えない立場”になるため、解決までに時間もお金もかかります。
◆ 第4章まとめ(トラブル回避チェック)
納期遅延は工期全体に影響
サイズ・仕様違いは現場で止まる
不具合時の責任はほぼ施主側
トラブルは「想定していなかった部分」で起きる

施主支給をめぐるトラブルの多くは、**「安くなるかどうか」ではなく「誰が責任を負うのか」**を曖昧にしたまま進めてしまうことから起きています。
見積もり段階では問題なさそうに見えても、引き渡し後に不具合が起きた瞬間、責任の所在が一気に現実問題として浮かび上がります。
この章では、
なぜ施主支給は保証対象外になりやすいのか
不具合が起きたとき、実際は誰が対応するのか
契約書・約款で必ず確認すべきポイント
を、契約実務の視点から整理します。
5-1. 保証対象外になるケース
■ 要点まとめ
施主支給品は、原則として住宅会社の保証対象外になるケースが多いのが現実です。
■ なぜ保証対象外になるのか
住宅会社が保証を付けられるのは、
自社で選定
自社で仕入れ
自社で施工管理
したものに限られます。
施主支給品はこの前提をすべて外れているため、
「品質を担保できないものに保証は付けられない」
という判断になります。
■ よくある保証対象外の例
項目 | 内容 |
照明 | 初期不良・短期故障 |
水栓 | 水漏れ・内部破損 |
トイレ | 作動不良・部品破損 |
住宅会社からすると、施工自体はしていても、製品そのものの保証はできないという立場です。
■ 見積書・契約書での表記例
「施主支給品については保証対象外とする」
「支給品の不具合は施主責任とする」
この一文を、深く考えずにサインしてしまう方が非常に多いのが実情です。
▼ プロ視点の注意点
「施工保証」と「製品保証」は別
施工した=保証される、ではない
曖昧な説明は必ず書面で確認
5-2. 施工後の不具合対応は誰がするのか
■ 結論から
施主支給品の不具合対応は、ほぼ施主が窓口になると考えておくべきです。
■ 実際の対応フロー(よくある例)
不具合発生
住宅会社へ連絡
「支給品なのでメーカーへ」
メーカーへ連絡
「施工状況次第」
現場確認が必要
有償対応 or 対応不可
この間、生活は止まらず、不便だけが続くことになります。
■ 特に揉めやすいケース
水漏れ
電気トラブル
可動部の異音
これらは、
商品不良
施工不良
使用環境
どれとも断定しづらく、責任の切り分けが非常に難しい分野です。
▼ 実体験ベースの現実
引き渡し後3か月で水栓から水漏れ。・住宅会社:支給品のため保証外・メーカー:施工状況次第結果、調査費+修理費を施主が全額負担というケースがありました。
▼ 専門家コメント
不具合対応の「窓口」を事前に決める
メーカー保証の条件を確認
保証書の保管は必須
5-3. 契約書・約款で見るべきポイント
■ 要点まとめ
施主支給を行うなら、契約書と約款の確認は必須です。
■ 必ずチェックすべき条文
チェック項目 | 見るべき内容 |
保証条項 | 支給品の扱い |
瑕疵責任 | 適用範囲 |
工期 | 遅延時の責任 |
追加費用 | 再施工・再手配 |
■ 特に注意したい文言
「一切の責任を負わない」
「施主の責任において」
「当社は関与しない」
これらの表現がある場合、トラブル時はほぼ施主負担になる可能性が高いです。
■ プロがすすめる確認方法
口頭説明だけで済ませない
「施主支給の場合はどうなりますか?」と具体的に質問
重要部分はメールや書面で残す
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◆ 第5章まとめ(責任整理チェック)
施主支給品は保証対象外が基本
不具合対応の窓口は施主側
契約書の一文がすべてを左右する
「知らなかった」は通用しない

ここまで読んで、
「施主支給って、思っていたより簡単じゃないな…」
と感じた方も多いと思います。それは正しい感覚です。
施主支給は、“やる・やらない”の二択ではなく、“どこまでやるか”を判断する行為です。
この章では、感情論やSNSの成功談ではなく、実務的に「GO/NO-GO」を判断するための基準を整理します。
6-1. 金額差が明確かどうか
■ 結論から
差額がはっきり見えない施主支給は、やる意味がありません。
■ 判断の基本ルール
プロ目線での目安は、次の通りです。
判断 | 目安 |
やる価値あり | 差額10万円以上 |
要検討 | 差額5〜10万円 |
やらない | 差額5万円未満 |
※ここでの差額は「商品代 −(施工費+管理費+リスク)」の実質差額です。
■ よくある失敗パターン
「商品代だけ見て15万円安いと思っていました」
しかし実際は、
施主支給施工費:+6万円
管理費・調整費:+3万円
→ 実質差額:6万円
この状態で、
納期管理
トラブル対応
保証リスク
を引き受けるのは、割に合わない判断と言えます。
▼ プロ視点のアドバイス
「最終的にいくら下がるか」を必ず数値化
見積書に差額を書き出す
“気分的に安い”はNG
6-2. 工期・施工リスクを許容できるか
■ 要点まとめ
施主支給は、工期に影響が出る前提で考えるべきです。
■ 自問すべき質問
次の質問に、即答できますか?
引き渡しが1週間遅れても問題ないか
仮住まい延長・二重家賃は許容できるか
急な買い直しに対応できるか
1つでも「NO」があるなら、施主支給は慎重に考えるべきです。
■ 工期がシビアな人ほど危険
子どもの入学・転校
賃貸の解約期限
引っ越し業者の予約
こうした条件がある場合、施主支給はリスクが跳ね上がります。
▼ 専門家コメント
工期に余裕がない施主ほど、「自分で管理する工事」を増やすべきではありません。家づくりは、全体最適で考えることが重要です。
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6-3. 住宅会社との事前合意が取れているか
■ 結論から
住宅会社との関係性ができていない状態での施主支給は失敗しやすいです。
■ 必須の事前確認項目
確認項目 | 内容 |
施主支給可否 | 項目ごとに確認 |
提出資料 | 品番・仕様書 |
納品期限 | 日付を明確に |
施工費 | 金額を事前確定 |
保証 | 書面で確認 |
■ 危険なサイン
「まあ大丈夫ですよ」と曖昧
見積書に反映されていない
契約後に話が変わる
これらがある場合、施主支給は一旦ストップした方が安全です。
▼ 実務者の本音
施主支給がうまくいくかどうかは、住宅会社との“温度感”でほぼ決まります。協力的でない場合、小さなトラブルが大きな不満に変わります。
◆ 第6章まとめ(判断チェックリスト)
差額は明確か(実質ベース)
工期リスクを許容できるか
住宅会社と書面で合意できているか
自分が「管理役」になれるか
1つでも不安があれば、**施主支給を減らす判断も“正解”**です。
次はいよいよ最終章です。施主支給の本質を整理し、後悔しない結論をまとめます。

注文住宅における施主支給は、よく「コストを抑える裏ワザ」のように語られます。
しかし、ここまで見てきた通り、施主支給の本質はまったく別のところにあります。
■ 施主支給の本質を一言で言うと
「お金を払う代わりに、責任を自分で持つ選択」です。
商品選定の責任
納期管理の責任
不具合対応の責任
保証外リスクの責任
これらを理解した上で選ぶなら、施主支給は納得感のある選択になります。
■ 施主支給が向いている人
金額差が大きいケースだけに絞れる
工期に余裕がある
住宅設備や建築に一定の知識がある
トラブル対応も含めて楽しめる
■ 施主支給が向いていない人
とにかく失敗したくない
忙しくて管理できない
初めての家づくり
工期や保証を最優先したい
■ プロとして伝えたいこと
「全部任せる=損」ではありません。むしろ、任せた方が結果的に安く、安心できるケースは非常に多いです。
■ 最後に(専門家としての立場)
「施主支給をして後悔した人」も「やらなくて正解だった人」も、数多く見てきました。
共通して言えるのは、後悔する人ほど「安くなると思って選んでいた」という点です。
施主支給は、安さではなく、納得で選ぶもの。
その判断材料として、この記事が役立てば幸いです。
出典名 | 内容・参照ポイント | URL |
国土交通省|住宅瑕疵担保責任制度 | 新築住宅の保証範囲・責任区分の基本 | |
住宅瑕疵担保履行法 概要 | 施工者責任と保証対象の考え方 | |
国土交通省|建築着工統計調査 | 注文住宅市場・住宅価格動向の基礎データ | |
消費者庁|住宅トラブル事例 | 契約内容・責任所在に関する注意喚起 | |
住宅請負契約約款(一般的な工務店・HM約款) | 施主支給品の保証除外・責任分界の実務慣行 | ※各社契約書に準拠 |
注文住宅の見積書・契約書分析(第三者視点) | 施主支給による追加費用・トラブル事例の分析 | 実務知見に基づく |
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